たった一度、女性から胸ぐらを掴まれ学んだこと

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物心ついたころから、母親がスナックのママでした。

山形県内の小さな繁華街にあるスナックでしたが、店は大きく、そして繁盛していました。一番多い時は10人近く若い子を雇っていたと思います。

 

小さい頃は夜になると家の中に母親がいないことを不満に思ったりしましたが、そのことで母親を責めるようなことはしませんでした。

時々泥酔して帰ってくる母親は「立派な労働者」であることを子供ながらに知っていたのかもしれません。

 

僕は高校生になると、母親のスナックを手伝うようになりました。

と言っても、母親の店の近くの居酒屋でバイトをしていたので、仕事が終わったら閉店際の母親の店に寄って片付けを手伝ったりする程度です。

窓の無い空間に残るウイスキーやタバコの臭い。口紅のついたグラスや吸い殻。高校生の僕の目には、それが妙に色っぽく映り、いつも少し緊張していました。

 

お客さんは県内の公務員が中心で、中学時代の教師が泥酔していたりしました。

 

「先生、閉店だよ。もう帰りなよ」

「タクシー呼んでくれ。みんなには言うなよ」

「わかってるよ」

 

山形の、狭い田舎の、狭い繁華街。

それでも僕にとってそこは、同級生たちが知らない、立派な大人の世界。

大人の仲間入りができたような気がしていました。

 

僕が母親の店に手伝いに行く楽しみのひとつに、自分より年上のキレイなお姉さんたちに会えることがありました。

彼女たちは僕よりも5~10歳年上で、化粧をして、いつも肩や脚の出る服で着飾っていました。そして、たまに手伝いに来るママの息子である僕に冗談を言ったり、からかったりして、いつもかわいがってくれました。

同級生たちがおぼこく見えてしまい、今思えば10代、20代の僕が年上ばかりと付き合っていたのは彼女たちの影響が大きかったのかもしれません。

 

大学生、会社員、フリーター、シングルマザー。彼女たちは昼は別の顔を持っていましたが、スナック一本の子もいました。きっと東京のスナックで働いているアルバイトの子は「何者」かになるためバイトをしている人が多いんでしょうけど、田舎のスナックはそれが「生業」になっている人が多い気がします。

 

その中でも、忘れられない人がいます。

 

カヨコさんです。

本名はまったく違うのですが、社会現象になった野島伸司三部作ドラマ「未成年」に出てくる安西加代子に似ていて、カヨコと呼ばれるようになったことを話してくれました。

彼女はきつめの顔をしていましたが、女の子の中で一番明るく、お客さんからも一番人気がありました。彼女が店内にいるかいなかで、お店の雰囲気が変わるような存在感を持っていました。手を叩いてガハハと大きな声で笑い、よく飲んで、そして、よく酔いつぶれていました。

母親の管理が行き届いた店だったので、女の子が不用意に持ち帰られるようなことは無かったのですが、閉店後の店内でパンツ丸出しで眠るカヨコさんに自分のシャツをかけたのは二度や三度ではありません。

そして、彼女は東京出身で、それだけで山形から出たことが無かった高校生の僕には、とてもまぶしく映りました。

 

カヨコさんは起きると、時々カラオケで森田童子さんの「ぼくたちの失敗」を歌います。声を張らず、泣きもせず、淡々と歌います。

 

「 春の木漏れ日の中で 君の優しさに 埋もれていた僕は 弱虫だったんだョネ 」

 

彼女の歌は下手でしたが、それでもいつも底抜けに明るいカヨコさんが歌う、少し暗い歌には不思議な魅力がありました。客がいない店内で、母親もトサカのような前髪にタバコの煙を浴びせながら「なんか聞き入っちゃうのよね」とカヨコさんの気が済むまで歌わせていました。

 

僕は、カヨコさんから恋愛を教わりました。

当時付き合っていた僕の彼女が悲しんでいる時はその原因を、誕生日には送るべきプレゼントを、生理の辛さまで。何から何までカヨコさんに教えてもらいました。僕も、何かあればすぐにカヨコさんに相談しました。「君は優しすぎるよ」カヨコさんはいつもそう言って僕の背中を押してくれました。

これまでの人生で、自分の恋愛を相談したのは彼女だけです。

 

高校三年生。卒業後に東京に上京することが決まった僕は、それきっかけに付き合っていた彼女と別れました。

 

カヨコさんに、めちゃくちゃ怒られました。

怒られたのは、別れたことではなく、別れ際の僕の立ち振る舞いです。

僕は、自分が悪者になりたくなくて「君のことが嫌いになったわけじゃない」「このままだとお互いが辛くなる」という自分の都合のいいことばかり整然とならべ、別れたのです。感情ではなく、状況ばかりを伝えたのです。

 

そのことに、怒ったのです。

怒り、という生易しい言葉ではなく、激怒です。

女子が、田舎の高校生の、胸ぐらを掴んで、マジ切れしたのです。

サントリーオールドが並ぶ壁に僕を押し当て、カヨコさんは怒鳴るように、諭すように、言いました。

 

「本当に優しい男は、気が利くとか、味方でいてくれるとか、そんなんじゃないの。本当に優しい男は、お別れがちゃんとできる男なの。別れは、切り出す側が、悪者になるの。とことん悪者になるの。ちゃんと傷つけてあげるの。その人が、新しい一歩に、踏み出せるようにしてあげるの。淡い期待なんか抱かせちゃダメ。縛り付けちゃダメ。許してもらおうとしちゃダメ。それは、相手の優しさに甘えているだけなの。ちゃんとしたお別れができれば、それは、君の財産になるから。お願いだから、告白した時以上に、勇気を出して。弱虫にならないで。このことを、一生、忘れないで」

 

数年後、母親から聞いたのですが、カヨコさんは男を探して東京から山形まできていたのです。

カヨコさんが東京で付き合っていた男が山形出身で、男からの「君のことが嫌いになったわけじゃない、待っていてくれ」の一言を信じ、待ち続け、連絡が取れなくなり、何か当てがあるわけでもないのに、大好きな男を追って山形まで着ていたのです。

スマホも、SNSも無い時代。

東京生まれの女性が、知り合いもいない雪国でアパートを借り「いつか会えるかもしれない」という根拠なき期待を心の支えに、スナックで働いていたのです。

 

しかし、カヨコさんから逃げた男は、地元の女と結婚していました。

 

僕が東京に上京する数日前、カヨコさんは突然姿を消しました。母親にだけはあいさつをして、山形を去ったのです。

 

僕に、ちゃんとお別れすらさせてくれなかったカヨコさん。

今頃どこかで結婚しているのでしょうか。

おばさんになって、どこかのスナックで、ママにでもなって、歌っているのでしょうか。春の木漏れ日の中で、君の優しさに、埋もれていた僕は、弱虫だったんだョネ、と。

 

カヨコさん、僕は大人になりましたが、今でも胸を張れるような恋愛はしていません。

それでも、大切な人との別れの際だけは、あなたから力いっぱい、ギュッと胸ぐらを掴まれた、あの感覚を思い出し、弱虫な自分を殺しています。

そして、僕にちゃんとお別れを言ってくれる人の優しさを、ちゃんと感じれるようにもなりました。 

 

ありがとうございました。

 

おしまい

 

 

【お知らせ】

3月15日、書籍が販売されました。今回の原稿はページ数の兼ね合いで書籍には掲載されておりません。

 

年上男性の落とし方

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過去、何回かこのブログで「男を惚れさすのなんてチョロいのに、世の中の女性は何をやっているんだろう?」と言ってきました。

これからも、何度でも言います。

だって、本当にチョロいから。

それなのに、いつまでも「彼氏ができない」と嘆く女性が減らない。

そろそろ、もう一度「彼氏の作り方」について真剣に、腹を割って書こうと思います。

男と、女について。

 

今回は、気になる男性があなたよりも年上だった場合を書かせていただきます。

具体的には30代~40代の前半くらいの男性です。

 

 

まずは香り。

服装や、ヘアスタイよりも、まずは香りです。

20代の頃、セレクトショップで働いていたのですが、正社員新人研修でマネージャーに

「君の、その香りは何だ?ファーファ?ファーファって、あれか、柔軟剤か?白熊の。まだ売ってるのか?君はもしかしてシャンプーはメリットか?そんなことよりなぜ香水を使わないんだ?香りもおしゃれの一部だ。洋服を着るように、香水を使いなさい。自分の香りを見つけなさい」

とめちゃくちゃ怒られたことがあります。(後で調べたら後半はココ・シャネルか誰かの名言でした。あの野郎)

しかし、香りは非常に大切です。

男も女も、人間は嗅覚で恋をします。女性だけが持つ、すれ違ったときの香り。あの正体不明の香りは抜群の殺傷能力があります。どんな安っぽいボディタッチよりも有効です。香りで、彼の鼻孔に、肺に、内臓にボディタッチするのです。必ず身にまとってください。

香りの正体?いい香りがする女友達に「何の香り?」と聞いても「アヴェダ」「ディプティック」「テラクオーレ」など急に日本語が通じなくり、僕には分からずじまいなので、日本語が通じる、いい香りがする女性に聞いてください。

 

服装は女子アナ。一択です。

もちろん男性によって好みは変わりますが、女子アナの服装が嫌いと言う大人の男性はいません。SUPREMEにNIKEのスニーカーを履いている男性も、ダブルのライダース着ている男性も、チェケラッチョな男性も、女子アナ嫌いはいません。特に年上男性は女子アナに安心・安全を感じます。めちゃくちゃ好きな人は少ないけど、嫌いな人は絶対にいない。それが女子アナ。安パイ、女子アナ。鉄板、女子アナ。

女子アナの服装の強みは「それがベースになり、ギャップを生み出せる」ということです。例えば普段女子アナなのに、アウトドアデートにパタゴニアやノースフェイスを着るだけで男はグッとくる。たまに白シャツにライダースを着るだけでグッとくる。部屋でNIKEのパーカー着るだけでグッとくる。下着がエロいだけでいつもよりグッとくる。これらはベースに女子アナがあるからです。女子アナ、人間が数万年かけて創り出したひとつの結論、生物としての完成形なのかもしれません。

(女子アナの服装、似合わねぇんだよなぁ)という方もいます。その場合は丸の内OLです。(坊や、聞け。女子アナ似合わない人は丸の内OLも似合わないの。着たいもの着させろよ)という方は一度、無地の、生地がいいものを、自分のサイズで着てください。たまに自分のサイズ感を知らない人がいます。

上質な生地の洋服には美しいシルエットがあります。それを、自分の本当のサイズで着る。これだけで嘘みたいに良くなります。おしゃれな人はこのあたりを良く知っています。生まれ変わったような気持ちになります。そこに、細いヒールと、中身が見えない小さめのカバン。鎖骨に寄り添うような華奢なネックレス。好き。

 

髪の毛。似合う似合わないがあるので、男性がアホな顔して「ワンレンボブしか愛せない」と言っても切らないでください。全治数年の大事故になる可能性があります。信頼できる女友達や美容師にジャッジをゆだねましょう。ただ、男でも髪の毛がキレイか否かはすぐにわかります。動きがある、ツヤッツヤの髪の毛に男は弱い。「顔をかしげる仕草」がかわいいのは、ふわりと髪の毛が揺れるからです。さらりと顔にかかるからです。

 

ネイルは9割の男性は興味ありません。そのくせ、ジェルネイルが伸びてきて爪の根元に空間が開いていることを気にする男性はいます。気にしているけど言わないだけ。むかつきますよね。

 

メイク。ここ、男性はいくつになってもマヌケなので「すっぴんか否か」しか理解できません。最近はすっぴんかどうかも理解できない男性も多い。でも、モテる女性は、TPOによって複数のメイクを使い分けています。男性が気付けなくても、メイクの使い分けは男性の潜在意識にちゃんと訴えかけます。サブミリナル効果。

若い子は、赤色に注意してください。自分に似合ってない赤色を使っている子が多いの。絶対にあるはずよ、自分に似合う赤色。

 

記憶を制する者が年上男性を制します。

気になる男性の好きなもの、インプットしまくるのです。ここで「好きなもの」を聞かずに、彼のSNSや過去の発言や行動からインプットできれば完璧です。

例えば、彼と初めて二人きりの食事。以前は複数人で食事をしたことがある関係だとします。彼がハイボールを注文したら

「ハイボール好きなんですね。前にみんなで飲んだ時にもハイボールばっかり飲んでたもんね」

「うん。ハイボール好きなんだよね」(めっちゃ興味持ってくれてるやん!ラビュー!)

チョロい。

 

時間差を制する者が年上男性を制します。

先ほどの記憶のくだりと合わせ技になりますが、時間差で話を持ち出すのです。

「そういえば去年の夏でしたっけ。インスタに海の見える夕日の見えるカフェ上げてたましたよね?あの店行ってみたい」

「そういえばそんな写真あげてたっけな」(覚えてますとも!連れてくよ!ラビュー!)

チョロい。チョロすぎる。

 

男性が大事にしていることに気付いて、そのことを(前から気付いてましたよ)という体で、手放しでほめてください。

「ずっと前から思ってたんですけど、車の駐車上手ですよね。グッとくる」

「いつも革靴ピカピカですよね。お手入れしてますよね。ずっと前から思ってたんですけど、私のもやってほしい」

その人が大事にしているルーティーンや所作や自分ルール。絶対にあるはずです。

「あ、うん」とか言いながらも(やったほーい!ほめられたほーい!)ってウキウキしてますから。かわいいな、男子。 

 

ちなみに、先ほどから女性のセリフには敬語とタメ語が混ざってます。これにも年上男はグッとくる。笑えるくらいチョロい。

 

デートでは男性の話を傾聴してあげてください。

傾聴とは「聞く」と似ていますが、違います。全身で熱心に聴くのです。趣味や、映画や、仕事の話。なんでもいいんです。とにかくその男性が「熱心に話せること」を「熱心に傾聴」するのです。

AmazonPrimeで「有田と週刊プロレスと」という番組が見れるのですが、大のプロレスファンのくりぃむしちゅー有田さんがプロレスの歴史やおもしろさをゲストにプレゼンするのですが、その時の有田さん、めちゃくちゃ楽しそうです。どの番組より輝いている。これを、デートの相手にやらせてください。

男性のプレゼンに対して、あなたの質問の数だけポイントは上昇します。

「え?そこもっと詳しく教えて」

「例えばどういうこと?」

「その時、どんな気持ちだったの?」

これらの質問は話が広がりやすいです。カウンセラーやコーチングのプロが使う質問技法です。

 

カラオケデート。若い時はみんな大好きだったカラオケが30代になると好き嫌いが別れます。仕事の付き合いでしょうがなく、という人が結構います。誘う前に嫌いではないか確認してください。

カラオケ会の女子アナは下記です。

 

YUKI『JOY』

aiko『カブトムシ』

YUI『CHE.R.RY』

キロロ『長い間』

HY『366日』

宇多田ヒカル『First Love』

中島美嘉『雪の華』

絢香の『三日月』

Superfly『愛をこめて花束を』

 

これらの曲は、嫌いな人がいませんし、だいたいみんな知っている。そして「恋しちゃったんだ。たぶん気付いてないでしょ?」など何かしらのパワーワードがある曲ばかりです。相手の年齢から、その人が10代後半~20代に流行した曲をチョイスしてください。何かしら、胸がキュンと狭くなるような思い出があるはずです。あゆ、倖田來未、椎名林檎、アイドルよりも上記のほうがグッとくる男性のほうが多いです。CHARA(YEN TOWN BAND含む)、UAあたりは存在は知っていても曲を知らない男性います。名曲ぞろいなのに。

個人的にはマイリトルラバーの『Hello,Again』です。マイリトルラバーが好きな子に悪い子はいないと断言できます。何年も前ですが、会社の採用の面接官をしていた時に学生さんの履歴書に『マイリトルラバーが好き』と書いてあって「え?マジで?」と声が出ました。それだけで採用したくなりました。元気かな?あの学生さん。きっと今頃、優しい男と結婚して幸せな家庭を築いているはず。かわいい子供もいる。二人いる。賢いゴールデンレトリバーもいる。絶対いる。だってマイリトルラバーが好きって書いてあったもん。

 

プライドの高い年上の男性に対して、触れてはいけない三大元カレタブーがあります。

 

まずは元カレのステータスです。

たとえそれが事実だとしても「元カレは経営者」や「元カレはスポーツ選手」ということを自分から言わないでほしいのです。年上の男性ってやつにはチンケなプライドがあって「どうせ俺なんか経営者でもスポーツ選手でもないやいやい」と卑屈になってしまいます。自分から聞いてくるくせに。

 

二つ目は、元カレの性癖です。

僕たち男性は独占欲の塊であり、女性よりも恋人の浮気を許すことができないと言われております。なので、元カレとどんなプレイをしたのかを聞かされると、まるで寝取られたような気持ちになってしまいます。これも自分から聞いてくるくせに。性癖の開示はウソを織り交ぜながら。ご利用は計画的に。

 

三つめは元カレの悪口です。

これを言う女性が一番多いです。あなたの元カレがどんな悪者で、あなたを傷つけてきたとしても、それを自分から言わないでほしいのです。ろくでなしと付き合っていたら、その後付き合う方が評価が上がりそうな気もするんですけど、やっぱりいい恋愛をしておいてほしいと思います。ちゃんとした人と、ちゃんと付き合って、ちゃんと別れてきてほしいなという願望があるのです。それに、悪口を言いながら美しくいれる女性はいません。

 

「お前ら男たちだって元カノの自慢や悪口とか言うじゃねえかよ。こっちだって元カノは料理上手なのかな、巨乳だったのかな、長澤まさみと似てたらどうしよう、とか少しは気にしてんだぞ」と言われたら本当におっしゃるとおりです。そこについてはジャンピング土下座するしかありません。

男性があなたの過去について聞くのは「あなた史上、最初になりたい、最高になりたい」という欲が、そうさせます。ある意味、自傷行為に似た、歪んだ愛情表現なのです。

だから、元カレのことで男性が勝手に落ち込んでいたら、全力で「あなたが一番、あなたが最強、あなたが最高、あなたがブラボー」とを伝えてください。男ってやつは本当にもれなく単純な生き物なので、それだけでコロッと回復したりしますから。

そういうふうにできてますから。

 

そして、最後に一番大事なことを。

ここまで書いてきたことを、必死にやらないでください。

恋愛や婚活に必死な女子はあんまりかわいくありません。一所懸命な女子はかわいいけど、必死はかわいくありません。似ているようで、違います。

一所懸命、とは?

 

愛情を伝えることです。ひたむきに、素直に、愛情を伝えるのです。これは決してきれいごとではありません。

本末転倒になりますが、大人の男性には小手先の恋愛ハウツーなんかよりも、ただひたすら、愛情を伝えること。これに一番弱い。

 

年上男性には色々なタイプの男性がいます。

 

過去に恋愛で深手を負い、トラウマを抱えたまま生きる落ち武者。

趣味や仕事に生きてしまった恋愛童貞。

独身生活を謳歌しすぎたゆでガエル。

女遊びを繰り返した「真実の愛」という名の迷路の遭難者。

年上がゆえ、恥をかくのを死ぬほど恐れているチキン。

バツイチ、マザコン、ED、童貞。

たった一人の愛した女性との死別を経験している男性もいます。

 

しゃくしゃく余裕で暮らしているように見えて、みんな笑えないエピソードを抱えています。何かに臆病になっています。

足がすくんで、一歩踏み出せない男性が大勢います。

それは「草食系」なんて言葉では一括りにできないものです。

 

彼らの呪いを解くのは、あなたの愛情です。

あなたが素直な愛情を精一杯伝えることで、教えてあげてください。

 

YUKIがJOYで歌ったように。

誰かを愛することなんて、本当はとても簡単だ、ということを。

 

これで、気になる年上男性は落とせるはずです。

恋愛結婚不適合者の烙印を押され、十字架を背負いながら生きる36歳独身バツ無し彼女無しの僕が言うんだから、まちがいありませんから。

 

そういうふうにできてますから。

 

 

ありがとうございました

おしまい

 

【お知らせ】

今回のブログは本日3月15日に発売された書籍「ハッピーエンドを前提として」でボツになった原稿を無料公開しております。

ボツ理由:年上の男性の落し方は他にめちゃくちゃいい原稿があるので、そっち採用します。そもそも、締め切りにも間に合ってないし。あと、何度言っても著作権でNGのJ-POPの歌詞引用するし。あと、カラオケのマイリトルラバーのくだりが長い。余談ですが私は研ナオコの『夏をあきらめて』が好きです。以上。(編集者)

 

編集者、夏をあきらめた理由が気になります。

 

彼氏がいても、いなくても、結婚してても、していなくても、一所懸命生きるすべての女性のための本です販売ページのリンクの下にもくじと簡単な説明も貼り付けます。

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税込み1512円と決して安くはない価格ですが、ボリューム満点の256ページ(多くの本は200ページ前後が多い)に文字をぎゅうぎゅうに押し込めました。Twitter発の本によく見られる「文字が少ない余白の美しさ」は求めず、とにかく一行でも多くの文章を押し込むことに特化しました。本の紹介は下記より

www.zentei-happy-end.com

 何卒よろしくお願い申し上げます。

 

SNSで出会った女「エピソード1・Instagramの魔物」

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「ねえ、まだ?今どこ?」

 

 

約束の時間まで15分もあるのに彼女はご立腹だ。

一度も会ったこともない女に僕は叱られている。

 

「今渋谷だからあと5分くらい。美女を待たせるなんて、申し訳ない」

「ほんとだよ」

 

東京都目黒区中目黒。19時50分。

朝からボタボタとだらしない大粒の雨が降っていた。

人でごった返す改札。横断歩道手前のガードレールに彼女の姿を見つけた。会うのは初めてだったが、お互い顔は知っているのですぐに見つけることができた。イヤホンをし、退屈そうにスマホを見ている。目前まで迫った春を楽しむように街行く人のジャケットやパンツはカラフルだった。そこに赤や青の傘が彩りを加える。そんな中、白いシャツの彼女が一番カラフルに見えた。

 

彼女の真横に立ち、時計をトントンと叩て見せる。約束の10分前に到着したよ、と伝えるためだ。彼女は不機嫌そうな顔でこちらを一瞥し、スマホに顔を戻す。

 

「はじめまして!おまたせ!」

イヤホンをしている彼女にも伝わるように大きい声を出す。

信号を待つ人達の視線が集まるのを感じる。ようやく彼女はイヤホンを外し

「声デカくない?目立つからやめてよ。ボリューム調節機能壊れてるの?もしそうならすぐに修理して」

コミュニケーションが始まった。

 

「インスタグラムで見た変な柄の傘じゃないんだね。あの絵画みたいな柄」と彼女の持っているビニール傘を見ながら伝える。

「それは仕事場に忘れてきたの。そんなことより知ってる?今日、仕事が早く終わって30分も前に来たの。コーヒーでも飲もうかなって思ったんだけど、ビール飲みたいし、ここで待ってたの。だから、今の時点で20分も待っているの。あなたが定刻通りにきてたらあと10分も待つことになってたの。30分も人を待ったことないの」

 

この女は何を言っているのだろう。 

 

「今の登場のしかた、ナンパかと思った。なんならそのナンパされたことある」

「君みたいな無理めな女ナンパするかよ」

「無理めじゃない女ならナンパするの?」

「負け戦は好きじゃないんだ」

「ところで、インスタの印象と全然違うね。これは、いい意味でね。わたしガリガリな男嫌いなの。スーツが似合わないから。筋トレは?してる?あと声のボリュームは注意してね。元気なことはいいことだけど、耳はとても健康なの。そんなことより早く店行こ。お腹へった。お店どこ?靴が濡れるの嫌だから遠いならタクシー乗ろうよ」

「よくしゃべるね。情報量が多くて処理がおいつかない。とにかく僕はあの絵画みたいな柄の傘が見れなくてがっかりした」

 

昔の彼女は普通の会社員兼サロンモデルだった。インスタグラムが彼女を有名にした。フォロワーは20万人を超えている。本人は「インスタの初期からコツコツやってただけ」と言うが、コスメ、ヘアスタイル、ファッション。どれをとっても彼女の写真は美しい。様々な商品をPRするライター業もやっている。いわゆるインフルエンサーと呼ばれる界隈の人だ。

胸まであるロングヘア―、印象的な目、作り物のような鼻筋。写真だと大きそうに感じた身長は思っていたよりも低かった。顔の小ささがそう見せているんだろう。東京は美人で溢れかえっているが、彼女はまちがいなく上位1パーセントに入る。僕が24時間稼働のベルトコンベアでアルバイトが量産した人間なら、彼女は職人が神様からのオーダーを受けて、ていねいに作られたに違いない。

 

DMでやり取りをし始めてから1年以上の時間が経ったが、会うのは初めてだった。タイミングが合わなかったということもあるが、僕に勇気が無かったからだ。彼女からの「そろそろ至近距離でコミュニケーションしようよ」のメッセージがきっかけで会うことになった。 

 

彼女は自分のビニール傘を隣に立っていた女の子に「傘、無いんですか?迷惑じゃなかったら、これ使ってください。私はこの人に傘に入れてもらいます」とプレゼントし、僕と相合傘で歩く。彼女が濡れないように傘を彼女のほうに傾けながら昔見た漫画で同じようなシーンがあったなと思いだしたが彼女は絶対に知らないだろうし、言葉にするのを止めた。

 

「傘、あげたんだね。優しいじゃん」

「あの人、ずっと駅の前で待ってたの。誰かを。でもその人は来なかった。たぶん男。だから男がちゃんと来た私は傘を渡す必要があったの。それに、ビニール傘嫌いなの。いかにも量産品でしょ」

「よくわかんないけど、上から目線ってことは伝わったよ」

「さっきまで対等だった。そんなことより100メートルね。わたし、お腹空きすぎて100メートルしか歩ける自信ないの」

 

途中、すれ違った女の子に「あの、インスタ見てます」と声をかけられた。彼女は「ありがとうございまーす」と言って笑顔で手を振っている。女の子から僕はどう見えていただろうか。彼氏か、仕事関係か、もしかしたら目に入っていない可能性もある。いずれにせよ、背筋が伸びた。

 

「ねえ、あと50メートルしか歩けない」

「優しいな。君が100メートルしか歩けないと言ってからもう80メートルは歩いた。にもかかわらずまだ50メートルも歩けるって言ってくれる」

「数えてたの?細かい男は嫌われるよ」

 

店は中目黒の住宅地にある静かな和食屋さんにした。普段のデートで使う店よりも高級な店だ。一人でいるときは食事に執着がない。サラダチキンを袋から直接食いながらビールで夕飯はおしまいだ。その分、誰かと食事するときは良いものを食べたい。特にデートでお金を使うのはこれっぽっちも惜しいと思わない。

 

「ねえ、この店エロいね」

カウンターに座るなり僕にグッと顔を寄せて彼女は言う。ほんのりと香水の香りがした。嗅いだことない上品な香り。胸いっぱい吸い込みたい。あとで香水の名前を聞いておこう。

「ほら、見て、このカウンター。明らかに不倫でしょっていうカップルが3組。逆に、不倫に見えないの私たちくらい。私たちは恋人に見えるのかな。まさかSNS経由で今日初めて会った者同士とは思わないよね。今日、日本中で何人の人がSNSで出会ったと思う?きっとびっくりするくらいの人数が出会ってると思うんだよね。でも、少し後ろめたさも感じない?」

「SNSの出会いはとっくに市民権を得てるよ」

「ねえ、SNSで出会うって、すごく良いことだと思うの。ツイッターとかインスタってその人の人間性が出るでしょ?匿名ならなおさら。SNSでの出会いは会社や学校での出会いと違って、土台が無いっていう話を聞いたことあるんだけど、あれは違うと思うの。SNSの方がよっぽど土台ができる。言葉の選び方、写真の撮り方、他人との距離感、更新頻度。その人の人間性がもろに出るんだよ?それをさらけ出している者同士がお互いに『会いたいです』『会いましょう』ってなるの。職場でなんとなく仲良く接してる人同士よりも、よっぽど土台ができてると思わない?今日だって、私のこと初対面なのに無礼な女だなって思った?礼儀正しい、おしとやかな女が来ると思った?思ってないでしょ。私もあなたと何度もやり取りしたからこそ、こうやって遠慮なくいつもの自分でいられるの」

 

彼女はよく食べ、よく飲み、よくしゃべり、よく質問してきた。他人との距離感をいい意味で考えない。美人との会話には集中力がいる。顔や所作に気を取られると話が頭に入ってこないからだ。インスタでPRを依頼してくる会社の愚痴とか、確定申告とか、そんな話をしたと思うが、あまり覚えていない。

約3時間以上、会話は一度も途切れることなく続いた。

 

店を出ると日付が変わろうとしていた。二軒目という選択肢もあったが、お互い明日の朝早かったので解散することになった。

 

「ねえ、代々木に住んでるんだよね?私、渋谷だから家まで送って。私が部屋に入ってカギを閉めるところを確認して。今日セックスできるとは思ってないでしょ」

「OK」

 

実際、僕はセックスできるとは思ってなかった。本当に美しい女を前にすると男は性欲を失うようにできている。ビビっている、自信が無い、腰が引けている。そのあたりは全部正解だろう。 

タクシーに乗り、彼女が運転手に行き先を告げる。彼女の年収は知らないが家賃は僕のマンションより高いのは明らかな立地だ。そういえば、インフルエンサーをしているカメラマンの友達がいるが、まあまあな報酬をもらっている。大手からの依頼だと内容によっては10万近い依頼もあるらしい。

 

「アイス食べたい。アイス買って。ガリガリしてない、ちょっと高めの、クリーミーなやつがいい」

「ハーゲンダッツって言えばいい」 

 

彼女のマンションの隣にあるコンビニでハーゲンダッツ数種類、それと、彼女はしっかりした足取りだが、たぶん酔っ払っているから、水も一緒に買う。

予想通り、マンションは立派だった。エントランスロビー大きなソファが見える。たぶん有名なデザイナーのソファだ。

 

オートロックの前でコンビニの袋を手渡そうとすると

「もう忘れたの?あれからまだ30分も経ってないよ」彼女はそう言って袋を受け取らずにオートロックを開ける。

「そうだった。鍵を閉めるのを確認する大事な役目があった」

 

8階まで上がるエレベーターの無言の時間がやけに長く感じた。

 

部屋のドアの前でコンビニの袋を手渡し「じゃあね、また飲もうね。おやすみ」と彼女が部屋に入るのを見送る。

デートが終わる。彼女はよく笑って、きっと楽しんでくれた。そういえば香水の名前を聞くのを忘れた。次会ったときに聞けばいいか。ところで、次は、あるんだろうか。それにしても

 

 

カギが、閉まらない。

ガチャリ、が聞こえない。

 

 

 

 

(え?何?なんで?)

ドアノブを見つめること以外何もできない僕は、きっと間抜けな顔をしていただろう。10秒か、30秒か、もしかしたら1分かもしれない。さっきのエレベーターの何倍も時間が長く感じた。

 

 

混乱していると、ドアノブが回った。

さっき買ったばかりのハーゲンダッツを持った彼女が出てきた。

 

「一口あげる」スプーンで僕に一口食べさせる。

冷たくて、口の中に甘ったるい味が広がる。

 

「ハーゲンダッツのスプーン使わないんだね」

僕がそう言い終わらないうちに彼女は手を大きく広げて僕に抱きつく。

 

「プラスチックのスプーンはダサいからきらいなの。今日はすばらしい出会いでした。ありがとう。次はいつ?そっちから誘ってね」

「うん」

まぬけな声で返事するのが精一杯だった。

 

「じゃあね、おやすみ」 

彼女はスプーンを咥えてドアを閉めた。

 

カギが閉まる静かな音がした。

 

 

「悪魔か……」

蚊の鳴くような声でつぶやく。 

魔物だ。美しい人間の顔をした魔物だ。なんだ最後のハグは。欧米か。なんであんな立ち振る舞いが許されるんだ。普通なのか。東京のインフルエンサー界隈では普通の挨拶なのか。とにかく、逃げろ。これ以上は危険だ。振り返るな。お前じゃ無理だ。本能が訴えかけてくる。正直、手に負えない。年収が3000万円あるとか、元カノが長澤まさみとか、そんなレベルじゃないととても太刀打ちできない。旅人の服と銅の剣でデスピサロに戦いを挑んでしまった。結果、自分の、男としての、オスとしての限界を知った。

 

外に出ると、彼女のマンションが冷たく僕を見下ろしていた。

さっきまで立派なマンションに見えていたのに、今はラスボスの要塞に見える。

 

タクシーを拾い、彼女の香りと、まるで柔らかい陶器のような肌を思い出しながらため息をつく。

 

「お疲れですね。代々木までは明治通りで行きますね。間もなく4月なのに、今日は寒かったですね。朝から雨も降ってたし。さっき上がりましたけどね。雨の方がタクシーは忙しいから降ってもらったほうがいいんですけどね。でも、これじゃ、まだ桜は咲きませんね。でも、早い所だと来週の末くらいから咲くらしいですけどね」

 

運転手が話しかけてくる。情報量が多い。

 

「そうですね……こんなに寒くて、桜なんか咲くんですかね」

「そりゃ、咲くと思いますよ。春ですからね」 

「そうですね」

返事をしながらスマホを取り出す。何件か通知が入っていた。ひとつひとつ既読をつけて返信する。

その中に、さっきまでデートしていた魔物からLINEが来ていた。

開くと、ハーゲンダッツを持った自撮りの写真と「ごちそうさま。次、いつ?」のメッセージ。

こっちが瀕死の状態で、尾っぽ巻いて命からがら逃げ帰っているのに、メラゾーマでとどめを刺された気分になる。

でも、いい。心地いい。安らかに死ねる。勝手に、死ねる。

 

僕たちには、僕たちの恋愛がある。

僕たちとは、誰の事だろう。それは、普通の人と、普通の恋愛だ。普通の恋愛とは何だろう。SNSでの出会いは本当に普通なのだろうか。もう二度と会うのはよそうと思っている自分もいれば、魔物の沼に片足を突っ込んだままいつまでも抜こうとしない僕もいる。たぶん、僕はまた会ってしまう。そういえば、来月もSNSで知り合いになった人と会う約束がある。誰だっけな。

運転手はまだ何かしゃべっていたが「春ですからね」とだけ答えた。

 

おしまい。

 

この物語はフィクションです。

【次回:SNSで出会った女 エピソード2・支配する女】 更新日未定

 

【お知らせ】

書籍「ハッピーエンドを前提として」が発売されます。恋愛がうまくいかない方はもちろん、一所懸命生きるすべての女性のための本です。

販売ページのリンクの下にもくじと簡単な説明も貼り付けます。 

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税込み1512円と決して安くはない価格ですが、ボリューム満点の256ページ(多くの本は200ページ前後が多い)に文字をぎゅうぎゅうに押し込めました。Twitter発の本によく見られる「文字が少ない余白の美しさ」は求めず、とにかく一行でも多くの文章を押し込むことに特化しました。本の紹介は下記より

www.zentei-happy-end.com

 何卒よろしくお願い申し上げます。